ビジネスゲームを用いた、履歴情報記録と評価情報記録に基づく操作者に関する分析精度の向上、並びに分析
竹本 拓治
産学官連携本部
シリアスゲーム、ビジネス教育、ファイナンス教育、アントレプレナーシップ教育、ゲームの教育利用
本研究は、経営学を中心とした社会科学的な視点から、デジタルゲームの教育分野他への応用、ならびに実用化を目的としている。基となる技術は、ゲーム操作者の入力コマンドを保存していく履歴情報記録と、予め保存された評価情報記録の双方を読みだし、分析システムの評価指標に基づいた評価用情報を出力する特許である。
(1) 「ゲームを操作することにより、操作者に関係性のある精度の高い評価結果の出力」が可能になり、シリアスゲームの新たな可能性となる。
(2) 従来技術では操作者との関係性が不明瞭であった入力と出力との関係に、明確な根拠を与える。
(3) 市場が拡大し安定期に差し掛かったデジタルゲーム産業等に対し、教育や医療の分野への貢献等の可能性を切り開く。
ゲーム産業(アナログ・デジタル)、ICT教育産業、健康機器産業(医療的自己診断)
・特願2011-206072「分析システム、分析方法及び分析プログラム」(平成23年9月21日)出願人:福井大学、発明人:竹本拓治
・平成22年9月 Takuji Takemoto “Considering Financial and Economic ICT Education using Massively Multiplayer Online System” パーソナルファイナンス学会
・京都大学平成21年度VBL若手研究助成「ベンチャーファイナンスシステム確立のための金融教育システムの構築」(代表者) ・パーソナルファイナンス学会研究助成 平成22年度「金融経済教育の波及性に関する研究 -自律型人材育成における教育実践型アプローチ-」(代表者) ・中山隼雄科学技術振興財団研究助成(重点研究A) 平成23年度「オンラインゲームの多人数インタラクティブ性とアバター成長体験を通じた起業教育コンテンツの研究」(代表者) ・科学技術融合振興財団調査委託研究 平成23年度「Massively Multiplayer Online System を利用したシミュレーション&ゲーミングの起業教育コンテンツへの応用の調査研究」(代表者) ・パーソナルファイナンス学会研究助成 平成24年度『金融経済教育の波及性に関する研究 -意思決定能力の涵養における教育実践型アプローチ-』(分担者) ・平成24年度福井大学ILF試作開発事業「操作者の行動を高精度分析できるゲーム型教育ソフトの試作」(代表者)
タイおよび周辺国における専門社会調査
竹本 拓治
産学官連携本部
タイ、市場調査、販路開拓、キャリア教育、人材研修
社会科学研究者として、タイ国の外資誘致政策、ミクロ経済動向、日系中小企業の東南アジア進出に関する研究調査経歴をもとに、これまで同国に関する(日系)中小企業からの販路調査受託、進出相談、現地アテンド等を行ってきた。その他、現地法人との政策提言研究も行っている。専門は政策科学(企業の政策科学)であり、専門社会調査士の資格を有する。
(1) 日本における海外進出相談・アドバイス、現地大学研究者との連携(タイ)
(2) 国内中小企業からの特定商材に関する販路可能性・市場調査の受託(タイ)
(3) 国内中小企業に対する海外進出検討の初期段階における現地アテンドおよび継続相談(タイ)
市場調査、ミクロ経済事情
竹本拓治「中小・ベンチャー企業の東南アジア進出に関する政策支援について」日本中小企業学会誌、2010年
竹本拓治「在タイ日系中小企業、零細事業者の金融事情と政策支援について」同志社商学、2013年
本務校において産官学連携業務、アントレプレナーシップ教育研究、企業戦略に関する教育と研究、短期海外研修プログラムを担当している。アントレプレナーシップ教育研究では、先進国における開業率の低下が、経済発展における起業家の「機会損失」とされる以外の要因の存在可能性を調査している。それゆえ中進国であるタイおよびその周辺発展途上国を研究フィールドとする。
社会科学研究者として、上記の研究の中で、東南アジアにおけるミクロ経済動向、日系中小企業の東南アジア進出行動については、産業界へのフィードバックが可能な領域であり、(日系)中小企業からの販路や進出に関する相談や調査、現地アテンド等を行ってきた。現地法人、現地大学との交流も行っている。専門は政策科学(企業の政策科学)であり、専門社会調査士の資格を有している。
骨導音によるユーザインタフェース
森 幹男
情報・メディア工学専攻
骨導音,ユーザインタフェース,補聴器,モールス通信,人体通信
本研究では歯音(歯のかみ合わせ音)と吸着音(舌打ち音)の骨導音を入力コードとしたユーザインタフェースに関する検討を行った。利用方法としては,図に示すようなモールス通信による声を出さないで行う会話や機器の操作が考えられる。声の出せない人をはじめ,健常者が利用しても便利なユーザインタフェースを目指している。
(1) 歯音と吸着音の骨導音を入力コードとした声を出さないで行うユーザインタフェース。
(2) 音声劣化による聞き間違いが起こらない,腕時計型電極と歯に取り付けた電極間の人体通信。
(3) 骨導音の時間分解能に着目した,両耳聴取による音質改善効果の解明。
ユーザインタフェース,インプラント型補聴器,睡眠時無呼吸症候群診断,いびき診断
“骨導音によるユーザインタフェースの検討,”日本音響学会2013年春季研究発表会講論集 2-2-5 (2013).
"Effects of Cross-hearing by Bone Conduction on the Temporal Resolution of Hearing, "ICEE2012, P-EC-5, pp. 1732-1735 (2012).
なし
・4種類のピックアップマイクに対して,収録された音のS/N,歯音・吸着音の集音レベル,周囲騒音に対する雑音耐性を調べ,歯音・吸着音を高効率で集音できるピックアップマイクの検討を行った。
・試作機にBluetooth送信モジュールを接続し,Bluetooth受信モジュール側から,歯音と吸着音が十分聞き取れることを確認した。
・8名に対する聴取実験で,腕に取り付けた電極と歯に取り付けた電極との間で人体通信を用いても音声劣化による聞き間違いが起こらないことを実験的に確かめた。
・新しく提案した複数のバンドパスフィルタ処理による歯音・吸着音検出実験で,歯音では100 %,吸着音では91 %の識別率が得られた。
・骨導音の音質が気導音に比べて劣る原因として,(周波数特性ではなく)時間分解能に着目し,骨導音の時間分解能を主観評価実験で調べる実験を行った結果,骨導音の時間分解能が気導音に比べて劣り,両耳聴取により改善することが明らかとなった。
情報理論に基づいた通信システム
岩田賢一
情報・メディア工学専攻
情報理論,情報源符号,通信路符号,制約符号,符号化・復号化
情報化社会において,効率よくかつ高い品質と高い信頼性のもとに情報を蓄積,伝送するシステムおよびネットワークの構築の意義は必要不可欠である.これらを実現する理論として情報を数理的扱う理論体系を備えた情報理論がある.研究の目的は,データ系列をネットワーク上で記録,伝送,処理のための効率的なアルゴリズムの開発および情報システムの究極の性能を評価することである.
(1) ハミング符号の並列符号器/並列復号器における演算回数の評価
(2) 無歪みデータ圧縮アルゴリズム
-3
符号化・復号化
Polar符号の紹介,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review,2013.01
情報スペクトル的方法を用いた最大ひずみ下での情報源・通信路符号分離可能条件, 電子情報通信学会論文誌基礎・境界,2011.09
高度に発達し続けている情報化社会において,効率よくかつ高い品質と高い信頼性のもとに情報を蓄積,伝送するシステムおよびネットワークの構築の意義は必要不可欠である.これらを実現するための理論として情報を数理的扱う理論体系を備えた情報理論がある.今日まで広い意味において情報理論をテーマとして教育と研究を行っている.データ圧縮,誤り訂正符号等の符号化/復号化アルゴリズム,更には,マルチメディアやインターネット等を含むネットワーク符号,多端子情報理論についての研究を行っている.研究の目的は,データ系列をネットワーク上で記録,伝送,処理のための効率的なアルゴリズムの開発および情報システムの究極の性能を評価することであり,新たな情報システムにおける開発の指針を提案することで社会に貢献することである.
災害における非常用通信ネットワークシステム
小高知宏
原子力・エネルギー安全工学専攻
情報通信技術,災害復旧支援ネットワーク,アドホックネットワーク,無線LAN,イーサフォン
本学が特許を有する通信技術であるイーサフォンを用いた災害復旧支援ネットワークの構築についての研究開発を行う.イーサフォン無線端末による災害復旧支援ネットワークでは,電池等によって電源を確保したイーサフォン無線端末を,相互に無線の到達しうる範囲内に設置する.無線イーサフォンは,通信回線や通信サーバ等の通信インフラが不要なうえ,設定が不要であり,災害における非常用通信ネットワークシステムの構築技術として有用である.
(1) 携帯電話やインターネット等の通信インフラが破壊された極限状況でも通信装置として利用可能
(2) サーバや管理装置などが一切不要
(3) 装置やソフトウェアがシンプルで頑強
音声通信端末,データ通信端末,センサネットワーク
通信装置,および,通信方法 特許登録番号4110251
特になし
研究責任者らは,これまでの研究で,LANに代表されるコンピュータネットワークの技術を応用して,音声等のマルチメディアデータを伝送する簡便な通信装置であるイーサフォン端末を開発した.本装置はIP電話やインターネットテレビ電話等に代表される従来型の通信システムと異なり,イーサネットあるいは無線LANの機能のみを用いて通信する.このため,IP電話のような複雑なシステムは不要であり,かつ個々の装置の設定も基本的に不要である.サーバも不要であり,端末装置を既存のLANに接続するだけで,ただちに装置間で音声等の伝送が可能となる.また,端末装置はきわめて安価に製作でき,サーバも不要なので,コストが極めて低廉である.
これまでに,ディジタルデータやアナログ音声データを扱う有線イーサフォン端末や,無線LANを用いた無線イーサフォン端末などを開発済みである.また,災害復旧支援ネットワーク構築のためのプロトコルを構成し,シミュレータによってその挙動の評価を行ってきた.
レーザー光の周波数安定化および原子・分子の精密レーザー分光測定(周波数領域、時間領域)
熊倉 光孝
物理工学専攻
レーザー分光学、量子光学、レーザー冷却、原子光学
レーザーを用いた原子・分子の精密分光測定、レーザー・電磁場による原子の運動操作(レーザー冷却技術、原子ビーム技術、磁気トラップなど)、狭帯域レーザー光源の開発(半導体レーザーなどの周波数安定化)を行っています。光学技術、電磁場、真空技術についての技術相談に対応できると思います。
(1) 半導体レーザーの周波数安定化
(2) レーザー光スペクトルの精密測定(~kHz)、原子・分子の精密分光測定
(3) 中性原子のレーザートラップ、磁気トラップ
光学計測装置、分光測定、原子ビーム
M. Kumakura et. al, "Topological formation of a multiply charged vortex in the Rb Bose-Einstein condensate: Effectiveness of the gravity compensation", Phys. Rev. A 73, 063605 (2006)
リングレーザーや半導体レーザーを用いて、準安定He原子ビームやRb原子蒸気のレーザー冷却実験を行ってきました。現在は、Rb原子を対象にレーザー冷却を行い、ボース・アインシュタイン凝縮体を生成し、その量子ダイナミクスを光学的に観測する実験研究を進めています。レーザー冷却や凝縮体波動関数の制御を行うために、MHz~kHzのスペクトル線幅にまでレーザー周波数の安定化が必要で、そのためのレーザー周波数安定化システムの開発も行っています。連続波の固体リングレーザーや半導体レーザー、nsパルスレーザーを主に使用し、偏光分光や飽和吸収などの非線形分光、レーザー波面の位相制御などを行っています。
中性原子のレーザー冷却・トラッピング(レーザーによる原子の運動操作)
熊倉 光孝
物理工学専攻
レーザー冷却、原子光学、レーザー、量子光学、原子波
レーザーや電磁場を用いた原子の運動操作(レーザー冷却、光トラップ、磁気トラップなど)と原子気体のBose-Einstein凝縮体について、実験研究を行っています。レーザー冷却や原子波の操作に必要な狭帯域レーザー光源(半導体レーザーなどの周波数安定化)や、精密分光・光学測定装置の開発も進めています。光学技術、電磁場、真空技術についての技術相談に対応できると思います。
(1) 波面の位相を制御したレーザーを用いて、誘導ラマン散乱により原子気体のBose凝縮体を光学的に操作することを試みています。
(2) 運動量状態を選別した光学遷移による原子の運動制御
(3) Bose凝縮体波動関数の位相変化を利用した高感度センサーの開発
レーザー技術、分光技術、電磁場・重力の精密計測技術
物質波ソリトンを用いた精密計測装置 特願2009-259334
これまでに、Rb原子気体をレーザー冷却することによってBose-Einstein凝縮体を生成し、その中に発生させた量子渦のダイナミクスを観測してきました。Bose凝縮体は超流動性を持ち、その中に発生する渦は循環が量子化され、通常の流体とは大きく異なる振る舞いを示します。私たちはこの量子渦について、これまでにない性質をもつ状態を発生させ、その挙動を実験的に研究してきました。この原子気体のBose凝縮体は巨視的な波動関数として振る舞い、振幅と位相で運動が記述されるのですが、この位相を様々に制御してより複雑な量子渦構造のダイナミクスを探る実験や、原子の位相を利用した高感度センサーの開発などを目指しています。
細胞培養の添加因子
寺田 聡
生物応用化学専攻
CHO細胞,間葉系幹細胞,再生医療,抗体医薬,バイオ医薬品
現在、動物細胞培養によってバイオ医薬品)が生産され、さらに再生医療ないし細胞治療も現実のものになりつつある。これら細胞の培養では、増殖因子を培地に添加せねばならず、現状では牛血清など動物由来因子が利用されている。しかしながら動物由来因子を利用することは、狂牛病など人畜共通感染症が懸念されるため、医薬品生産やヒトに移植される細胞の培養に利用されることは忌避される。そのため、化学合成品と植物などに由来する、細胞培養のための増殖因子/培地が求められている。われわれは日本国内で広く栽培されている農作物からのある抽出物が、細胞増殖促進作用を有することを見いだした。
(1) われわれが見いだした米糠抽出物は安全性の高い植物由来であり、人畜共通感染症の懸念も無い。
(2) 活性も高く、ウシ血清アルブミンにも劣らず効果的である。
(3) 栽培植物から得られるものであり、安価でかつ供給も安定
細胞培養分野は、とくに再生医療/細胞治療にかかわるヒト/哺乳類細胞培養
米糠抽出物を有効成分として含有することを特徴とする細胞増殖促進剤
発明者 寺田聡、森山聖子、和田洋、福本健、千田泰史、築野卓夫 特願2012-125989
築野食品工業
1. 組換えタンパク質/バイオ医薬品生産系
抗体医薬品の生産モデルとして、CHO細胞の培養系で検討した。この細胞の無血清培養系に米糠抽出物を添加すると、細胞増殖/抗体生産ともに改善することを見いだした。さらに一層の改善を目指して、セリシン加水分解物を同時に添加すると、さらに改善した。
2. 細胞治療系
間葉系幹細胞の培養では、2つの培養段階がある。一つ目は、取得した細胞を活発に分裂を誘導し、増幅する段階である。続いて、必要数まで増幅された細胞を、目的とする細胞/組織に分化誘導する段階である。今年度は、最初の増幅段階に米糠抽出物を用いたところ、骨分化を誘導した場合、より効果的な分化誘導が実現した。
3. 有効な因子がどのような生体分子かを検討
タンパク質分解酵素で処理すると活性が消失することから、有効成分はタンパク質であると特定された。
3次元培養用基材
藤田 聡
ファイバーアメニティ工学専攻
ナノファイバー,再生医療,培養,幹細胞,医療デバイス
再生医療研究の進展に伴い、細胞増殖・分化の良好な足場となる三次元的な材料の開発が強く望まれているが,これまでの材料はハイドロゲルなどの均質な高分子材料が用いられてきた。これに対し,本シーズでは,生体組織が本来有する異方性のある構造をナノファイバーを用いて再現でき,さらに厚みのある構造を構築できる。
(1) 生体組織が本来有する異方性のある構造を再現した足場材料
(2) 厚みのある構造体により,高密度培養が可能な点
(3) 種々の高分子材料に適用可能な汎用性
組織修復用足場材料,創傷被覆材,人工臓器,高密度培養デバイス
該当なし
該当なし
再生医療研究の進展に伴い、細胞増殖・分化の良好な足場となる三次元的な材料の開発が強く望まれている。生体組織中では、異方性を有した細胞外マトリクスの幾何構造のもとで細胞の形状が変化し、細胞形状が細胞機能に影響を与えることが知られている。そのため、異方性の高い材料は再生医療で望まれている足場材料の開発に期待されている。細胞外マトリクスは、ナノメートルサイズの繊維構造から成るため、ナノファイバー基材が次世代の培養基材・組織修復足場材料として期待されている。しかしながら、現在シートやマット状の薄い不織布が用いられており、立体的な組織構造を模倣するためには厚みのある構造体が望まれている。そこで本研究では、レーザー加工機で加工した基材上に、エレクトロスピニング法を用いて配向性を有したファイバー層を作製し、これらを積層することで、異方性を有した厚みのある組織を3次元的に構築することに成功した。
レーザーを用いる環境・材料・細胞計測
内村智博
材料開発工学科
質量分析法,レーザーイオン化法,クロマトグラフィー,蛍光寿命イメージング,環境・材料分析
本研究室では、レーザーイオン化質量分析法を用いて、環境実試料中の有害化学物質や各種材料などを迅速に分析する手法を開発しています。また、蛍光寿命イメージング顕微鏡を用いて、細胞に対する薬剤の効果など、主に細胞診断のための装置開発とその応用に取り組んでいます。
(1) 従来にない迅速・簡易分析が可能
(2) 環境実試料の微量分析が可能
(3) 混合試料中の目的成分のみを選択的に検出可能
環境分析・環境浄化関連企業,石油製品製造業,バイオ・製薬メーカーなど
(1)“反応状態分析方法及び装置” 内村智博, 特願2012-101913.
(2)“Rapid Analysis of Gasoline-Contaminated Soil Using Multiphoton Ionization/Time-of-Flight Mass Spectrometry” Anal. Sci., 29, 82 (2013)
近年、事業所跡地や周辺地域に蓄積した環境汚染物質が問題となっています。本研究室では、レーザーイオン化飛行時間型質量分析法を用いて、環境実試料中の有害化学物質を迅速に測定する手法を開発しています。また、高感度化を目的として、試料の利用効率を高めることが可能なオンラインコールド法を開発するとともに、各種材料などの高精度分析法の開発を行っています。さらに、蛍光寿命イメージング顕微鏡を用いて、細胞に対する抗がん剤の効果など、主に細胞診断のための装置開発とその応用に取り組んでいます。
化学反応熱量計
藤田 和美
材料開発工学科
反応熱、発熱速度、温度制御、重合速度解析
反応器のジャケット部分の入口に冷却媒体を温度・流量を設定値に固定し反応器内の熱を除熱し、除熱速度を測定する。反応器内には反応温度を設定温度になるように発熱用のヒータを設置し電圧を調整して必要とする加熱速度を与える。除熱速度と発熱速度が一定になったところで反応を開始させ、反応熱が発生すればヒータによる発熱速度が減少する。この減少した部分が化学反応による発熱速度となる。反応器内温度、冷却媒体入口温度・出口温度、冷却媒体の流量を連続的に測定・記録し、除熱速度・発熱速度解析を行う。
発熱速度が3~100[J/S]間での広範囲において連続的に測定ができ、化学反応熱から重合速度解析ができる。
酢酸ビニルの乳化重合反応の発熱速度から連続した重合速度解析を行い、微粒子内での停止反応速度解析が可能となった。
フッ素系新規モノマーの反応熱測定と発熱速度からの重合速度解析し、化学プラントの設計に必要なデータ収集が可能となる。
重合反応による反応熱から発熱速度を測定し重合反応速度解析を行い重合速度の挙動を明らかにする。
特許第4788963号 化学反応熱量測定装置および測定方法
轟産業との共同研究
図2には反応熱量計による酢酸ビニル乳化重合反応の一例として反応温度50℃でモノマー濃度0.2g/cc-水、開始剤として過硫酸カリウムを1.25g/l-水で乳化剤にラウリル硫酸ナトリウムをそれぞれ2.0,0.7,0.1g/l-水と変化させた場合の反応時間の経過に対する発熱速度・重合率曲線を示した。赤、黒、青のそれぞれのマークは重量法で求めた重合率であり、すでに文献等で報告されているデータを参考までに記載した。反応熱量計による反応熱から算出した各々の重合率曲線とは良好な一致が見られた。この図から乳化剤濃度の減少により一つ目の発熱速度のピークは大きく減少するが、二つ目のピークは若干減少しているのが観察された。又、反応熱量計を用いることにより通常の重量法では測定できない重合時間の経過に対する微細な変化が計測できる。反応熱量計の特徴は反応熱から連続的に詳細な重合速度、重合率の挙動が算出できる利点がある。反応熱量計による発熱速度が他のビニル系モノマーと比較して大きい酢酸ビニルの乳化重合反応で重合後期のゲル効果に起因する粒子内の停止反応速度定数の解明に大きく貢献できた。
透過型電子顕微鏡による形状観察・形状撮影
鈴木清
材料開発工学専攻
透過型電子顕微鏡、形状観察、形状撮影、
透過型電子顕微鏡による観察と撮影が可能です。加速電圧は最大で125kV。白金・バナジウム合金でのシャドウイングも可能です。写真はフィルムのみであり、デジタルファイルにはなりません。分解能は3nm程度です。
(1) 乳化重合などで生成された高分子微粒子の直径分布の測定
(2) 直径数10nm以上の無機微粒子の形状観察とサイズの測定
(3)
微粒子関連材料、塗料、化粧品
Kiyoshi Suzuki, Kohei Nishiyama, Isao Yamanaka, Takatoshi Koshiba and Shuzaemon Satoh; Polymer Journal 44, 1077-1081 (November 2012)
転相乳化によって、スチレン系モノマーのミニエマルションを調整しつつ、ラジカル重合を行わせることで、大きさが20~30nm程度のポリスチレン系微粒子の調製に成功しました。その微粒子の直径の分布を計測しました。
動的光散乱光度計による微粒子およびエマルションの平均直径測定
鈴木清
材料開発工学専攻
粒子直径、液的直径、動的光散乱光度計
溶媒中に分散している微粒子や液滴の平均直径と直径の大まかな分布の測定が可能です。ただし、溶媒の粘度と屈折率の値が必要です。溶媒が水の場合には、値は既知ですので、調べていただく必要はありません。測定可能範囲は、10nm~1ミクロン程度です。温度は10℃~70℃程度の範囲です。
(1) 乳化重合などで生成された高分子微粒子の直径分布の測定
(2) 直径数10nm以上の無機微粒子の形状観察とサイズの測定
(3)
微粒子またはエマルション関連材料、塗料、化粧品
Kiyoshi Suzuki, Kohei Nishiyama, Isao Yamanaka, Takatoshi Koshiba and Shuzaemon Satoh; Polymer Journal 44, 1077-1081 (November 2012)
転相乳化によって、スチレン系モノマーのミニエマルションを調整しつつ、ラジカル重合を行わせることで、大きさが20~30nm程度のポリスチレン系微粒子の調製に成功しました。
環化ポリマーを用いた高透過性・高選択性ガス分離膜
橋本 保
材料開発工学専攻
カチオン重合,環化重合,ビニルエーテル,環化ポリマー,気体透過性
ポリマー分子の主鎖が剛直で側鎖にかさ高い置換基があると,ポリマー分子間に間隙が空きやすく,そのポリマー膜の気体透過性は高くなることが知られている。二官能性ビニルエーテルの環化重合により得られる剛直な環化主鎖とかさ高い側鎖を持つ環化ポリマーも,同様の特徴を示すと期待し,その気体透過性について検討した。
従来にない新しい環化ポリマーの合成開発
環化ポリマーの材料としての初めての利用
環化ポリマーの分子構造を利用したガス透過膜への応用
排ガスから二酸化炭素の分離,燃料電池,光学プラスチック,エンジニアリングプラスチック
関連特許
知的財産権その1
発明の名称:ジビニルエーテルのホモポリマー,その製造方法およびその用途
出願番号:1113507
出願日:平成23年4月28日
出願人:国立大学法人福井大学,日本カーバイド工業株式会社
発明者:橋本 保,森田一弘,室谷昌宏,福西陽一,油井要兵,柿沼眞一
知的財産権その2
発明の名称:ビニルエーテル誘導体ポリマー並びにその製造方法及び用途
出願番号:1123437
出願日:平成24年4月18日
出願人:国立大学法人福井大学,日本カーバイド工業株式会社
発明者:橋本 保,森田一弘,小嶋優樹,柿沼眞一,室谷昌宏
関連論文
K. Morita, T. Hashimoto, M. Urushisaki, and T. Sakaguchi, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 51, in press (2013).
二官能性のビニルエーテルから得られた単体の環化ポリビニルエーテルは,対応する非環化ポリビニルエーテルと比べて,気体透過性は低くなるが,高い気体選択性を持つことがわかった。さらに,高いガラス転移温度(Tg)を持つ環化ポリビニルエーテルを母体にすることで,単独重合では室温以下のTgを持つポリマーを与える長い側鎖を持ったビニルエーテルとの共重合体でも,室温以上のTgを持つポリマーを合成することができ,製膜が可能であった。特に,オキシエチレン鎖などの極性の高い側鎖を持つビニルエーテルとの共重合により得られた環化ポリビニルエーテルは,窒素に対して高い二酸化炭素選択性をもつ高分子膜となった。さらに,側鎖のオキシエチレン鎖が長く極性が大きくなるほど,二酸化炭素選択性がより高くなった。また,熱プレスにより製膜した環化ポリマーは,気体透過性,気体選択性が非常に低く,ほとんど気体を通さない高分子膜となった。
ポレウレタン/FeCl3 複合 導電性ナノファイバー
坂元 博昭
生物応用科学専攻
導電性ナノファイバー, エレクトロスピニング, 電極材料
本研究では、大きな比表面積を有した導電性ナノファイバーを開発し、電極材料として様々な電子デバイスへの応用を目指す。電子移動を担う導体としてFeCl3とポリウレタン樹脂の混合溶液から、エレクトロスピニング法により導電性ナノファイバーを作製する。その抵抗率は、2.4×104 Ω・cmであった。
(1)めっきなどの外部からの表面処理ではないため、金属欠陥が起らず、電気特性を保持することが可能である。母材がポリウレタンであるため伸縮性もある。
(2)添加する金属濃度、樹脂材料を制御することによって、ファイバーの導電率を変化させることができる。
(3)エレクトロスピニングの条件を変えることで、ファイバー太さ・形状も制御可能。
燃料電池、センサ、生体材料、分離膜
なし
なし
10%Polyurethane(PU)と20%FeCl3を、THFを溶媒として溶解させた。これは、溶媒であるTHFとFeが錯塩を形成し、安定化するためであると考えられる。エレクトロスピニング法により、流速2.0 ml/h、20 kVの印加電圧で、ファイバーをガラス基板上へ紡糸した。厚さ約100 μmのファイバーマットを作製した。エレクトロスピニングにより作製したナノファイバーをSEMにより計測した結果、その直径は2.96±0.31μmであった。EDX分析から、作製したファイバー表面から鉄元素が検出された。したがって、本研究で作製したナノファイバーは、Fe元素を含有したポリウレタンファイバーであることが明らかになった。作製したファイバーは、導電性を示し、その抵抗率は2.4×104 Ω・cmであり、金属濃度に依存して抵抗率が変化した。作製したポリウレタンファイバーは、ファイバー内に存在する鉄元素を導体として電子移動が起こることで導電性を有していることが強く示唆される。